水谷です。
とてつもなく、久しぶりの更新となってしまいました。
(ブログ更新するのに必要な、IDやらパスワードやらを齋藤先生に教えてもらえてよかった〜。)
この間、皆様、つつがなくお過ごしでしたでしょうか。
今日は、以前から気になっていた「人身傷害補償特約」のことを書いてみたいと思います。
保険会社のホームページなどによると、最近「車の保険」に入っている人の7割以上が「人身傷害補償特約」に入っているそうです。
「人身傷害補償特約」というのは、事故が起こったときに、自分の損害(人身のみ、物損は基本的に除く)を自分の過失分もふくめて、全額(ただし保険会社の計算による額)を自分の保険会社に払ってもらえる特約です。
いわゆる「対人賠償」とは、全く別ですから、間違えないでくださいね。
どんなときに使えるかというと、
例えば、交通事故で、自分が怪我をして(全治3ヶ月の重傷)を負い、後遺症が残り、結果として5000万円の損害を受けたとします。この事故の自分の過失が7割、相手の過失が3割というとき・・・。
これが人身傷害に入っていない場合は、・・・・
相手に請求できるのは、1500万円だけ(5000万×30%=1500万円)です。
残りの3500万円(7割)は、自分の過失ですから、どこからも補償されません。
こんなとき、この特約を使うと、損害の「全額(保険会社の算定による額)」が補償されます。
すごいですね
このように、たいへん役に立つ、画期的な特約なので、人気が出て、現在では、多くの人が、この特約をつけているのでしょう。
ただ、ここで、注意しなければいけないことがあるのです。
それは、同じ名前でも、保険会社によって内容が違うということなのです。
どこか違うか。
もらえるお金の金額が違うのです。
先ほどの例でいえば、「全額」としてもらえるお金が、A社の契約者のケースでは4000万円、B社の契約者のケースでは3000万円ということがあるのです。
入っていないときの金額(相手からの1500万円だけ)と比べれば、もちろん、入ったおいたほうがいいのですが・・・。
「会社によって、1000万円も違うの〜、びっくり!」と思った方がほとんどなのではないでしょうか。
また、「そもそも、全額っていうんだから、5000万円じゃないの?」と思った方も多いのではないでしょうか。
一体どうして、そんなことがあるのかというと、「全額(保険会社の算定による額)」というなかで、小さい字で書いてあるところ(契約書や広告などでは、小さい字で書いてあるところは大体重要なことが書いてありますよ!参考書や教科書とは反対ですね。)、下線を引いた「算定」の仕方が保険会社によって違うのです。
そもそも、「全額」といっても、実は全額ではないのです。小さく書いてある(保険会社の算定による額) を「全額」といっているということなのです。
この「全額」というのは、裁判で認められる金額の、 60%〜80%前後しかないことがほとんどです。
保険会社によって、それが58%くらいだったり、75%くらいだったりするのです。
そうすると、まったく同じ事故で同じ特約を使っても、保険会社によって、さきほどの例で言えば1000万円近くも実際に手元にくるお金が違うことがあるということです。
さらに、先に特約を使う時期によっても、金額が違ってくる場合もあるようです(いろいろな説があり裁判所などでケースごとに争われています)。
一番、問題なのは、「全額」といっているのに全額はもらえないこと、その金額も保険会社によってこと違うことが、消費者にわかるようになっていないことです。
さらに、算定の仕方も複雑でケースバイケースなので、事前に、どの保険会社で何割もらえるのか、契約の前に教えてもらうことも難しいのです。
このことに気が付いた一部の弁護士が、このようなわかりにく広告の仕方は「不当表示だ」といって、改善を求めているのですが、なかなか改善されていないのが現実です。
保険が自由化されて、いろいろな種類の保険が出るようになって、いいこともあるのですが、その反面、内容をよくよく注意する必要がある時代になっています。
このブログを読んだ方は、自分で車の保険をかけるときには、人身傷害特約で補償される本当の金額はいくらなのか、問い合わせをするなどして、よくよく検討して選んでくださいね。その問い合わせに丁寧に答えてくれないような場合は、契約するかどうか、慎重に検討し直したほうがいいでしょう。
また、こうした問い合わせが殺到する状態になれば、保険会社も、もっと公正でわかり易い契約内容(要するに、本当の「全額」に近い金額を補償する方向)に改善していくと思います。
だって、そういう保険会社が出てきたら、その保険会社の契約数はどっと増えるでしょうから。
改善されて、実際に事故が起こって人身傷害特約を使った際に「こんなはずではなかった」と悲しい思いをする人が一人でも減って欲しいと思っています。