一昨日ブログを更新した後、友人から、裁判員裁判お疲れメールを
もらいました。ということで本日も更新します。
少し前の話になってしまいますが、今年の1月に、日弁連の裁判員裁判
特別研修に、講師として原田國男裁判官が招かれました。
その講演の中で、被告人の反省の事実を重視することの問題点について
話をされていました。私の記憶の限りで要約すると、有罪判決の量刑
(懲役○年)を決める際の事情として、反省しているということを重視すると
えん罪を招く危険性があり、また否認をした場合、必要以上に刑が重くなる
危険性があるというものでした。
私はその話を聞いて、裁判官の中にはきちんと刑事裁判の原理原則を
理解している人がいるのだな、この人の下で全ての刑事裁判を行って
もらいたいなと思いました。
現在の刑事裁判は、そのほとんどが自白事件であり、有罪判決事案です。
そのような中で、裁判官は本当にこの被告人が罪を犯したのかということを
自問自答することをせず、漫然と有罪判決を書くということに慣れてしまっている
ように思えます。
勿論、私は、被告人の利益のためであれば裁判官と戦う(本来戦う相手は
検察官ですが・・・)気持ちを常に持ってはいますが、他方で、否認をして
有罪判決になったら量刑を重くされてしまうのではないか、この裁判官は
そもそも無罪判決の書き方を知っているのだろうかという思いを持っている
ことも事実です。
認めれば執行猶予が見込める事件で、否認して争うか否かを、躊躇することなく
判断できるかについて、自信がないことも事実です。
原田裁判官は、ご自分の経験談として、当初罪を認めていた被告人の様子が
おかしかったので、問いただしてところ、実は自分はやっていないんだということを
主張した、結果として無罪判決を出し、えん罪を1つ防ぐことができたというお話を
されていました。また、被告人が否認をしている場合には、被告人が調べて
もらいたい証拠を全部調べた上で判決を出したというお話もされていました。
被告人が否認をしてくれると嬉しいというような趣旨のお話もされていました。
「推定有罪」の裁判官が多数を占める中で、このような素晴らしい裁判官の話を
聞くことができたことに感謝しています。
しかし、近いうちに原田裁判官は退官されるとのことで、推定無罪という
大原則に基づく判決を躊躇なく出せる裁判官が1人いなくなってしまいます。
非常に残念でなりません。
弁 護 士 齋 藤 守