前回、日本の会社でも、株主が外国の企業・組織、であれば、「日本の会社」とはいえないというお話をしました。
これは、法律の世界では、常識です。
「商法」という会社のことを決める法律の世界では、会社の「社員」とは「株主」をいいます。そして、「会社」は「株主」のものであるとされています。
実は、前回は、「従業員」のことを「社員」と書いてあります。
これは、このほうがわかりやすいだろうと思ったからです。
だって、日本では、新聞でもテレビでも、「社員」といえば、「従業員」のことを意味しますから。
けれど、これが間違いのもと。
法律の世界では、社員とは株主をいうのです。
だから、株主はいろいろな権利を会社に持ち、保護もされています。
会社の経営についても、大事なことについては、口を出せます。
また、経営者(=社長)をすげ替えることも出来ます。
しかし単なる「従業員」は「社員(株主)」ですらないのです。
会社は従業員のものではないのです。
原則として、従業員は雇用契約(約束した範囲)の内容でしか保護されません。
もう、おわかりいただけたと思いますが、「従業員」ではあるが「株主」ではないという人達の集団というのは、法的には、非常に弱い集団です。
反対に、従業員ではないが、株主であるという人たちの集団は、強い権限をもちますが、その会社が危うくなれば、すぐに株式を売却すれば済むという点で、経営判断に対しては無責任な状態になりがちです。
そして、もう、気が付かれた方も多いと思いますが、「従業員」であり、かつ「株主」という人たちの集団は、非常に強い権限をもつことができ、かつ、適切な判断をできる可能性も高くなります。
まさに会社の構成員なのですから、会社自体を危うくするような判断はしないでしょう。他方で、従業員(自分達)の生活を不当に脅かすような判断もしないでしょう。
会社は、単なる「労働組合」の要求に対しては、「労働基準法」や「雇用契約」に反しない範囲で対応していれば足ります。できれば、最大の経費である人件費は、なるべく低く抑えたいでしょう。
しかし、「労働組合」であり、かつ「株主」でもある集団からの要求であれば、ことは、全く違ってきます。
特に、従業員の全員が毎月給与の5%を購入するような会社であれば、その会社の最大の株主は「従業員持株会」になるはずです。そしてその比率が発行済株式の1/2、場合によっては2/3を超えることになれば、これは、逆らうことはできない位の圧力になります。
それは、商法で、株主の一定数以上の同意があれば、社長のクビも切れるし、利益の処分についてノーをつきつけることもできるし、会社を解散することさえできると決められているからです。
大株主は、ある意味では会社にとって最大の権力者なのです。
国でいえば、有権者の大きな集団のようなものです。
他方、従業員は、いってみれば選挙権のない人たちの集団です。
おそろしいことに、日本の国民の多くは、そういう丸腰(何も武器=権利をもたない状態)のまま、経済競争という戦のなかをふわふわとただよっているのです。
いつまでも、自分で自分の身を守ることができない地位(従業員)で、自分の大切な時間を他人にとられ続けるのは、もうそろそろ、終わりにしたらどうかなというのが最近の私の気持ちです。